参照:国土交通省ウェブサイト(航空局 無人航空機飛行ルールページ)
2026年4月、ドローン業界にとって大きな転換点となる制度がスタートしました。
それが「USP制度(UTMサービスプロバイダー制度)」です。
ドローンの活用はここ数年で急速に広がり、空撮や点検、測量だけでなく、ドローンショーや物流といった分野へと拡大しています。特に近年は、複数機を同時に運用するケースも増えており、空の利用密度は確実に高まっています。
これまでのドローン運用は、運航者同士の調整や現場での判断によって安全が保たれてきました。柔軟な対応や現場力が求められる中で、こうした運用は重要な役割を果たしてきたと言えます。一方で、ドローンの活用が広がり、飛行の規模や密度が高まるにつれて、より効率的で再現性のある管理方法も求められるようになってきました。今後は、これまでの現場力に加えて、「空をデータで管理する仕組み」が組み合わさることで、より安全で安定した運用へと進んでいきます。
この記事では、
・USP制度の概要
・DIPSとの違い
・現在の制度と今後どう変わるのか
・ドローンショー事業者への影響
・自治体、企業が知っておくべきポイント
を実務目線でわかりやすく解説します。
USP制度とは?いつから始まった?
USP制度を一言で表すと
USP制度とは、「ドローンの空域管理サービスを提供する事業者を、国が認定する制度」です。
ここでいう「USP」とは、UTM(UAS Traffic Management)と呼ばれるドローンの交通管理システムを提供する事業者のことを指します。簡単に言えば、空を飛ぶドローンの位置や飛行計画、周辺情報などをリアルタイムで共有し、安全な運航を支える仕組みです。
従来、有人航空機の空域については厳格な航空管制が行われてきました。一方でドローンについては、個別のルールや手続きは整備されているものの、航空機のような一元的な交通管理の仕組みは発展途上の段階にあります。
そのため、同じエリアで複数のドローンが飛行する場合には、運航者同士で調整する必要がある場面も多くありました。USP制度は、その「個別調整」に依存していた状況を改善し、システムによって空域を管理するための基盤を整えるものです。
重要な点として、この制度はドローンを飛ばすための新たな許可制度ではありません。あくまで、空域管理サービスを提供する側(USP事業者)に対する認定制度です。ただし、この仕組みが普及することで、結果的に運航者の負担やリスクは大きく変わっていきます。
なお、USP制度の詳細な仕組みや制度設計については、国土交通省が公開している資料でも確認することができます。制度の位置づけや今後の方向性について、より正確に把握したい場合は、以下の資料も参考になります。
USP事業者が担う役割
想定される役割には、以下のようなものがあります。
・飛行計画の共有
・他機との競合確認
・空域情報の提供
・気象情報の連携
・緊急飛行情報の通知
・リアルタイム運航支援
・将来的な衝突回避支援
つまり、ドローンを飛ばす人が安全に飛ばせるよう支える「空の交通インフラ」です。道路に信号や交通情報システムがあるように、空にも管理システムが必要になってきたということです。
USP制度は新しい飛行許可制度ではない|義務なのか解説
ここで誤解されやすいのが、
「USP制度が始まると、新たな許可申請が必要になるのか?」という点です。
結論から言うと、USP制度はドローンを飛ばす人向けの新たな許可制度ではありません。あくまで、空域管理サービスを提供する事業者側を認定する制度です。
したがって、現時点でドローン運航者が直ちに追加手続きを求められるわけではありません。ただし今後、USPサービスを活用することで飛行調整や安全管理の考え方は大きく変わっていく可能性があります。
White Crowスタッフ視点
制度の話は難しく見えますが、現場感覚で言えば「これまで電話や個別確認で行っていた調整が、今後はより仕組み化されていく」という理解に近いです。特にイベント案件では、関係者が多いほど恩恵を感じやすいと考えています。
DIPSとの違いとは?
USP制度を調べる人の多くが気になるのが、DIPSとの違いです。
DIPSとは
DIPS(ドローン情報基盤システム)は、国土交通省が提供する行政システムで、
飛行許可・承認申請
機体登録
飛行計画通報
各種届出
などを行う窓口です。
ドローン運航者にとって、制度上の手続きを行う入口と言えます。
参考:国土交通省ウェブサイト ドローン情報基盤システム2.0(DIPS)
USPとの違い
役割を簡単に整理すると、以下のようになります。
| 項目 | DIPS | USP |
| 主な役割 | 行政手続き | 運航管理支援 |
| 提供主体 | 国 | 認定事業者 |
| 対象者 | ドローンを飛行させる事業者・個人操縦者 | 継続的に運航する事業者・複数機運航者高頻度利用者 |
| 用途 | 許可・承認申請・飛行計画通報・機体登録等 | 空域調整・飛行情報共有・安全運航管理 |
| タイミング | 主に飛行前 | 飛行前~飛行中 |
| 利用の位置づけ | 制度上必要な公的手続き | 実運航を支える民間サービス |
つまり、
DIPS=制度上必要な手続きのためのシステム
USP=実際の運航をより安全・効率的にするためのシステム
という違いです。
今後は両者が連携しながら、よりスムーズな運用へ進んでいくことが期待されています。
なぜ今USP制度が必要なのか
ドローン市場が急拡大している
以前のドローン活用は空撮が中心でした。
しかし現在では活用分野が急速に広がっています。
- 空撮
- インフラ点検
- 太陽光設備点検
- 農業散布
- 警備巡回
- 災害状況確認
- 物流配送
- 観光PR
- ドローンショー
このように、ドローンは「撮影機材」から「社会インフラを支えるツール」へと進化しています。
その結果、今後は同じ空域で複数のドローンが同時に飛行する機会が増え、運航管理の重要性もこれまで以上に高まっていきます。従来のように、運航者同士が個別に連絡を取り合いながら調整する方法だけでは、対応が難しくなる場面も増えていくでしょう。
だからこそ今、ドローンの位置情報や飛行計画を共有し、安全かつ効率的に空域を管理する仕組みとして、USP制度の整備が求められているのです。
レベル4飛行時代への対応
近年は、有人地帯における補助者なし目視外飛行、いわゆるレベル4飛行の制度整備が進んでいます。
レベル4飛行が本格化すれば、物流配送や設備巡回、警備などの用途で、都市部や住宅地上空をドローンが飛行する機会も増えていくと考えられます。
そうした時代において重要になるのは、単に「飛ばせるかどうか」ではありません。
複数の機体が、同じ空域で安全に共存できるか。この視点がこれまで以上に求められます。
たとえば、別々の事業者が同じエリアで同時間帯に飛行する場合、飛行経路の重複や接近リスク、緊急時の対応などを個別調整だけで管理するには限界があります。
そこで必要になるのが、飛行計画や位置情報を共有し、空域全体を効率的に管理する仕組みです。USP制度は、まさにレベル4飛行時代を見据えた基盤整備のひとつといえます。
イベント需要の増加
地域イベントや企業の周年施策では、他イベントとの差別化が年々重要になっています。従来の花火やステージ演出は依然として人気がある一方で、それに加えて新たな話題づくりや差別化施策を求める声も増えています。
- もっと話題になる施策を実施したい
- SNSで自然に拡散される仕掛けがほしい
- 来場者に“ここでしか体験できない価値”を提供したい
といったニーズが高まっています。
その中で、視覚的なインパクトと話題性を兼ね備えた演出として、ドローンショーへの注目が集まっています。
一方で、ドローンショーは夜間飛行、都市部での実施、大規模集客イベントでの運航など、慎重な安全管理が求められるケースも少なくありません。
さらに今後、イベント会場周辺で他用途のドローン飛行が増えていけば、これまで以上に空域調整の重要性は高まります。
こうした背景からも、飛行計画や位置情報を共有し、安全かつ円滑な運航を支えるUSP制度のような仕組みが、今後ますます重要になっていくと考えられます。
人手だけでは限界がある
これまでのドローン運航では、
- 電話やメールのやり取りで飛行時間を調整する
- 現地で口頭確認を行う
- 経験者の判断で接近リスクを回避する
といった、人手による対応に頼る場面も少なくありませんでした。
こうした方法は、運航件数が限られている段階では有効な面もあります。
しかし、ドローン活用が社会全体に広がり、日常的に多くの機体が飛行する時代になると、それだけで対応し続けるのは難しくなります。
調整の属人化や確認漏れ、対応品質のばらつきといった課題も生じやすくなるためです。
だからこそ、誰が担当しても一定の品質で安全管理ができる、標準化された仕組みが求められています。
その答えのひとつが、飛行計画や位置情報をシステム上で共有し、空域管理を支えるUSP制度です。
現在の制度と今後どう変わるのか
USP制度の導入により、今後こうした状況が段階的に変化していくことが期待されています。
Step1:2026年4月スタート
まず始まったのが、USP事業者認定制度です。
この段階では、
- 飛行計画の共有
- 運航者間の調整支援
- 基本的な空域情報の提供
といった、基礎的な機能からスタートすると考えられます。
現時点では、すべての運航管理が一気に変わるわけではありません。
まずは、ドローンの空域管理を担う事業者を国が認定し、制度として運用を開始したこと自体に大きな意味があります。
これまで個別対応に依存していた空域調整を、今後はシステムによって支えていく、その第一歩が、2026年4月の制度開始といえるでしょう。
Step2:複数USP間の連携
今後は、異なるUSP事業者同士でも情報連携が進んでいくことが期待されています。
現在は各事業者ごとのサービス提供が中心になると考えられますが、将来的には複数のUSP間で飛行情報や運航状況を共有し、より広域かつ円滑な空域管理につながっていく可能性があります。
これにより、たとえば次のようなメリットが見込まれます。
- 異なるシステムを利用する運航者同士でも調整しやすくなる
- 複数エリアをまたぐ広域運航が行いやすくなる
- リアルタイムでの情報共有精度向上が期待できる
- 事業者ごとの仕組みの違いによる調整負担を減らしやすくなる
空の利用がさらに広がる将来を見据えると、ひとつのサービス内だけで完結する管理ではなく、事業者の垣根を越えて連携できる仕組みづくりが重要になっていくでしょう。
Step3:高度な空域交通管理
将来的には、より高度な空域交通管理への発展も視野に入っています。
たとえば、
- 有人航空機との情報連携
- 衝突回避機能の高度化
- 自律飛行を支える運航支援
- 空飛ぶクルマ(eVTOL など)との空域共存
といった領域です。
今後、空の利用主体がドローンだけでなく多様化していく中で、安全かつ効率的に空域を使うためには、従来以上に高度な情報共有と交通管理の仕組みが求められます。
その意味で、USP制度は単発的な制度改正ではありません。
将来の空のモビリティ社会を見据えた、空の交通基盤づくりの第一歩といえるでしょう。
参照👉 国土交通省ウェブサイト「USP制度段階的導入について(PDF)」
ドローン運航者には何が変わるのか
USP制度の整備が進むことで、ドローン運航者にとってもさまざまな変化が期待されます。
調整コストの削減
これまで、同一エリアでの飛行予定が重なった場合には、関係者同士で個別に連絡を取り、日程や時間帯を調整する必要があるケースもありました。こうした業務がシステム化されれば、調整にかかる時間や手間が短縮される可能性があります。
特に、限られた人数で運営している中小事業者にとっては、大きなメリットになり得ます。
安全確認の精度向上
周辺空域の飛行情報や各種制限情報が整理・共有されることで、必要な確認をより行いやすくなることが期待されます。その結果、経験や勘に頼りすぎず、客観的な情報に基づいた運航判断がしやすくなるでしょう。
新規参入しやすくなる
これまで、調整方法や安全管理に関する属人的なノウハウが求められていた領域でも、仕組みが標準化されれば、新たな事業者が参入しやすくなる可能性があります。
結果として、ドローン産業全体の活性化や市場拡大にもつながっていくことが期待されます。
ドローンショー事業者はUSP対応が必要になる?
USP制度はさまざまな分野に影響を与えますが、特に影響が大きいのがドローンショーです。多数の機体を同時に運航し、夜間やイベント会場周辺で実施されるケースも多いため、空域管理の高度化によるメリットを受けやすい領域といえます。

高密度運航との相性が良い
ドローンショーでは、
- 100機規模
- 300機規模
- 500機規模
- 1,000機規模以上
といった多数の機体を同時に制御するケースがあります。さらに、限られた空域内で正確な位置関係を維持しながら、音楽や映像演出と同期させる必要があります。
そのため、周辺空域の把握や飛行計画の管理精度は、ショーの安全性だけでなく演出品質にも大きく関わります。
事前調整の負担軽減
大型イベントでは、会場周辺で次のような飛行が重なる可能性があります。
- 記録撮影用ドローン
- メディア取材撮影
- 警備・巡回飛行
- 周辺イベントでの別用途飛行
こうした環境では、関係者との事前調整が複雑になりやすいのが実情です。USP制度が浸透すれば、飛行情報の共有や調整がより計画的・効率的に行いやすくなることが期待されます。
行政説明がしやすくなる
自治体主催案件や公共性の高いイベントでは、安全面に関する説明が重要になります。
たとえば、
- 落下リスクへの対策
- 周辺飛行体との干渉防止
- 緊急停止・緊急時対応体制
- 空域管理の方法
といった項目です。こうした説明において、制度的な枠組みに基づいた運航管理体制があることは、主催者や行政にとって安心材料になり得ます。
都市部開催の可能性拡大
都市部では人口密度や周辺環境の関係から、安全基準がより厳しく、開催ハードルも高くなる傾向があります。一方で、空域管理技術や制度整備が進めば、安全確保の選択肢が広がり、都市部でのドローンショー開催もより現実的なものになっていく可能性があります。
White Crow現場スタッフのひとこと
特にドローンショーの運営にあたっては影響はないかと思います。飛行計画が重複した際に、これまで個人間で調整していたことを、USPが代わりに調整してくれるのが本制度のメリットになります。
White Crowの現場視点|制度だけでは成功しない理由
制度やルールが整備されても、それだけでドローンショーが人の心を動かすとは限りません。
安全に飛ばせることは大前提です。
しかし、来場者の記憶に残り、感動や話題を生むイベントにするためには、それとは別に体験設計が欠かせません。
重要なのは、何機飛ばすか、どれだけ大規模かだけではなく、
- どんなストーリーを伝えるのか
- どの瞬間に歓声が起こるのか
- 観客が誰かに共有したくなるポイントはどこか
- イベント全体のテーマとどうつながるのか
といった視点です。
White Crowでは、ドローンショーを単なる演出手法のひとつとは捉えていません。
空を舞台に物語を描く体験。
その考え方をもとに、企業周年事業、地域イベント、観光施策、プロモーション企画など、それぞれの目的に合わせた演出設計を行っています。
制度が安全を支え、企画が感動を生む。
その両方がそろってこそ、本当に価値あるドローンショーになると私たちは考えています。
👉ドローンショーの企画・運用ならWhiteCrow
White Crowでは、安全設計・各種申請サポート・演出企画・当日の運航まで一貫対応。企業周年事業、自治体イベント、観光PR、地域活性化案件など幅広くご相談いただけます。

今、運航者がやるべきこと
現時点では、USP制度の開始によって、直ちに新たな手続きが必要になるわけではありません。 引き続き、従来どおりの飛行許可・承認手続きや、DIPS2.0での飛行計画通報が基本となります。
ただし、今後の変化を見据えると、いくつか意識しておきたいポイントがあります。
USP制度の基本的な仕組みを理解しておく
USP制度は始まったばかりで、これから本格的に普及していく段階です。
しかし、制度の目的や今後の方向性を理解しているかどうかで、将来的な対応スピードには差が出てきます。
特に、空域管理が「個別調整中心」から「システム連携型」へ移行していく流れは、早めに把握しておく価値があります。
認定USP事業者の動向をチェックする
今後は、認定USP事業者ごとにさまざまなサービスが提供されていくと考えられます。
- どのような機能があるのか
- 現場運用で使いやすいのか
- 自社業務と相性が良いのか
- コストに見合う価値があるのか
こうした視点で情報収集しておくことで、導入のタイミングを見極めやすくなります。
将来的な運用設計を見据えておく
もうひとつ重要なのは、将来的にUSPの活用が進むことを前提に、自社の運用体制を考えておくことです。
たとえば、
- 飛行計画の管理フロー
- 複数案件の調整体制
- 安全確認の標準化
- データ共有への対応体制
などを整理しておくことで、制度変化にも柔軟に対応しやすくなります。
特に、ドローンショーや広域運航、大規模案件を扱う事業者にとっては、USPとの連携を前提とした体制づくりが、今後の競争力につながっていくでしょう。
まとめ
USP制度は、ドローン運用のあり方を大きく変える可能性を持った仕組みです。特に、都市部開催を検討しているイベント主催者や、大規模案件で安全面に不安を感じている企業・自治体にとって、今後は制度理解がより重要になっていくでしょう。
これまでのように、運航者同士が個別に調整し、経験や目視に頼って安全を確保する時代から、データとシステムによって空域を管理する時代へと、少しずつ移行していくと考えられます。
2026年時点ではまだ制度開始直後の段階ですが、この流れが今後の標準になっていく可能性は十分あります。特に、ドローンショーのような多数機体を扱う高度な運用では、USPの活用が前提となる場面も増えていくかもしれません。
現時点で直ちに大きな対応変更が必要なわけではありません。
しかし、「これから何が変わるのか」を早く理解し、備えている事業者ほど、今後の案件獲得や安全性の説明において優位に立ちやすくなります。これからの空は、より多くのドローンが飛び交う時代になります。
その中で、物流・点検・イベント運営・ドローンショーなど幅広い分野において、制度理解と現場運用力の両方を備えているかどうかが、これからの競争力を左右していくでしょう。
